
設計:ウィリアム・メレル・ヴォーリズ
(1937年築、2019年 大規模改修)

大規模改修で復元されたアール・デコ意匠。
かつて出版社の密集していた神田に近いところから、作家の滞在やカンヅメに使われることが多く、そのため「文化人のホテル」として知られており、川端康成、三島由紀夫、池波正太郎、遠藤周作、松本清張、山口瞳、檀一雄、伊集院静らの作家が定宿としていた山の上ホテル(HILLTOP HOTEL)
三島由紀夫(1925 ~ 1970)
東京の真中にかういふ静かな宿があるとは思はなかった。設備も清潔を極め サービスもまだ少し素人つぽい処が実にいい。ねがはくは ここが有名になりすぎたり はやりすぎたりしませんやうに。
池波正太郎(1923 ~ 1990)401号室
X月X日 猛暑つづく。牛の歩みのような速度で、少しずつ原稿を書きすすめる。先般山の上ホテルへ三日ほど泊ったのが、私の夏休みだった。仕事もせずベッドへ寝転んでぼんやりしていただけだ。
X月X日 きょうは午後から山の上ホテルへ入る。ケン玉を持って行き、仕事の合間に久しぶりでやってみる。子供のころの私はケン玉の名人を自称していたものだが、数年ぶりにやってみて勘が狂ったというよりも、手がおもうようにうごかなくなっていることに愕然となる。
山口瞳(1923 ~ 1995)403号室
ホテルでは山の上ホテルが一番だ。一番だというのは一番上等だという意味ではない。一 番好きだと言ったほうがいいかもしれない。その「好き」の内容は「気持が安らぐ」もしくは「自分の家に帰ってきたようだ」ということになろうか。私が山の上ホテルに求めるものも、山の上ホテルが私に与えてくれるものも「安心感」である。私は、そもそも町なかの小さなホテルが大好きなのだが、こんな山の上ホテルのようなホテルが現代に残っているのは奇蹟のように思われて仕方がない。
トーベ・ヤンソン(1914 ~ 2001)ムーミン原作者
戴いたバラの花に強い印象を受けました。日本旅行の思い出として、何時までもわたしの胸に残るでしょう。若さ溢れる雰囲気一杯の学生街。合理的なホテルは方々で見かけますが、行き届いた親切で迎えてくれるところは少ない様です。

五階 天井のステンドグラス(吹抜け螺旋階段上)
右に六階 601号室への専用階段がある。
1970年に増築された別館は 2013年4月5日 屋上の機械室から出火、廃材などが燃える火事があり(原因は煙草の火の不始末)2014年6月に閉鎖(後に解体)本館三十五室のみの営業となった。その本館は度重なる工事で失われた創業当時のアールデコ意匠を2019年改修時に復元(12.1 再開)東京都全国旅行支援「ただいま東京プラス」を利用、今回改修後初宿泊。https://ryokoshientokyo.jp

五階フロア
天井ステンドグラスの「緑」螺旋階段カーペットの「赤」補色対比の美。
一粒社 ヴォーリズ建築事務所
この記事へのコメント
pogpog
https://www.jalan.net/yad387309/topics/entry0002897659.html
ナツパパ
騒がしくないロビーそしてこじんまりしたレストランや喫茶店?
その雰囲気が好きです。
Cedar
gop
出資した佐藤慶太郎が明治OB(北九州市八幡出身)元はホテルでは無い。
こちらのブログに竣工当時の貴重な写真(周りには何も無い)
https://blog.goo.ne.jp/ryuw-1/e/87a39565be6f723a7b6e99602cfe3a60
gop
東京の方には身近な老舗ホテルなのでしょうね(友人兄はこちらで挙式)
改修後はレストランも随分変わった様で(相変わらずお高い)
https://www.facebook.com/vories.tokyo/posts/2709361312450857/
私はクーポンでこのお菓子頂いて帰りました(2,000円)^^
https://www.yamanoue-hotel.co.jp/shop/products/detail104.html
gop
Cedarさんも古くからの御用達ホテルですか。
確かに宿泊当日も某歯科大ボート部の宴会が(流石リッチ学生)
勝負デートにも最適と思いますが、フレンチディナー16,000円から・・
https://www.yamanoue-hotel.co.jp/restaurant/lavi/menu.php
気合い入りますね^^
pogpog
http://www.omibh.co.jp/company/gaiyou.html
一粒社ヴォーリズ建築事務所 東京事務所はこのビル四階。一階はギター屋。
http://www.vories.co.jp/company/about.html#address
のり
八幡商業高校や旧豊郷小学校など学校建築にも美しいものがたくさんありますね。淀屋橋・北浜界隈でも「浪花教会」がありますし、大丸心斎橋は、外壁のみながら「よくぞ残った」と思います。
gop
東京事業所ビルはヴォーリズ建築事務所設計、1957年6月竣工。
https://www.facebook.com/vories.tokyo/posts/pfbid023otqNog1Z82VWrW4pUu3TXNLw9TXZd7uxLG1ZUbuX81JuFLFz3SsNUS3TJHmon91l
このビルだけは今も変わらず、前に1949年型ナッシュが停まってる。
https://www.mikipress.com/m-base-archive/2014/02/26-1.html
gop
「あさが来た」の広岡浅子が設立した大同生命 旧大阪本社もヴォーリズ。新ビルには旧ビルのテラコッタが使われているそうで、今年度の「生きた建築ミュージアム」に選定されたとか。大大阪時代には色々ありましたね。
https://www.daido-life.co.jp/company/news/2023/pdf/230509_news.pdf
しゅう
ここも結婚式では人気のホテルですが、ヴォーリス設計の建物とは恥ずかしながら存じ上げませんでした。
ヴォーリス建築は関西に多く残っていると思っていましたが、首都圏にも有名どころとして残っていたとは。まさに驚きです。
gop
昭和初期のお茶の水には三つのヴォーリズ建築がありました。
1. 日本初の西洋式集合住宅、文化アパートメント(1925)
http://www.vories.co.jp/work/residence/8.html
2. 旧 主婦の友社 本社ビル(1925)
https://smtrc.jp/town-archives/city/kanda/p04.html?id=a05
3. 佐藤新興生活館(現 山の上ホテル)現在残っているのはここだけです。